嵐の前の岸ジギ
台風を前に退屈な週末でした。そんななかで思います。こんな時どうやって過ごすんだったかな・・ と。
その答えは日常にありました。夕暮れに川沿いを歩く、その時見る風景でした。すなわち潮の引いた川でウエーディングしながらルアーを投げている姿。傍らではスズキがボイルしています。ここにトップを引いたら面白いだろうなと。
かたや岸からのジギングを思います。足元の固定された立ち位置からキャストし、流れに乗せながら底付近を探るアプローチです。こういう釣りをしていなかったなぁと。
一方で、これまでの私はフィッシングボートを持って釣りをしてきました。おかげで満足できる釣果を出せるようになりました。これは恵まれたことだと思っています。でもそんななかで、かつての釣りを思い出しもします。「海が荒れたらオカッパリしたいなぁ・・」そう思ってきました。それが“今”なのです。
そう思い立った休日の午後。明日は暴風の真っただ中です。いまなら風速6m。ボートでは躊躇する風ですがオカッパリなら可能です。ならば出よう。岸からルアー釣りをしよう。今がその時なんだ。息つく暇もなく準備を始めます。通常ならチェック表で忘れ物のないよう確認するのですがそれもおざなりです。だからフィッシュキャッチャーもペンチさえも忘れていました。それだけ気持ちをせかすものがあったのかもしれません。
ある港に着きます。岸壁を歩きます。その先端に着けば結構な風です。それでも足元は地面です。揺れもしないし転覆もしません。だから落ち着いてポジションを確保しよう。そうやって積み上げられたテトラ群に乗り込んでいきます。場所によっては斜面に踏ん張らなければならりません。場所によっては椅子に座るかのようです。その上でひとたびキャストすれば、ラインは宙に舞ってあらぬ方向にフケていきます。そんなことだから着底判断もままならず、最初はロングフォールからアプローチを始めましたが漠然たる状況です。ならばと逐一底をとってはボトムをトレースするよう為します。が、それでも反応がありません。
となれば湾内を向きます。もしや時化を嫌ったベイトが逃げ込み、それを追ったヒラメがいるかもしれませんよね。しかし恨めしくも根がかりの連発です。多くのアングラーが攻めてきたからでしょう。であれば仕方がない。もう一度外を向こう。そうやってまた沖にキャストします。するとアタリです。反動でアワセました。ところが手にしているのは古いシーバスロッド。グニュ~ンとします。それでもフッキングはしたはず。ならば後は巻くだけです。巻きアワセとは言わないまでも、ぐいぐいと寄せてきます。すると・・
「これかぁ~・・」
案の定ですよ。安々と都合のよい展開にはならないということですね。それでも不思議に満たされています。それは手にするまでにいろんなことを思ったから。その思いの数が何気ない釣りを充足させたと思うんです。
今回は釣れても釣れなくてもかまわない回でした。望み薄な状況で、ただ竿を振れればよかったのです。タモを忘れたのだから釣れなくてもいいと思っていたのかもしれません。なのに、多くの思いが心を巡り、退屈な週末を埋めてくれました。それは十分な満足感でした。
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